東京、仙台、福岡、札幌、三重、沖縄のみなさん、これを見逃す手は無いですゼ!
「INDEPENDENT」大阪公演終了!
7月28日(木)午後6時30分、大塚宣幸の「101人ねえちゃん」からはじまった、INDEPENDENT。それから75時間後…、さきほど、Sun!!の「スクラップ・ベイビィ!」で、大阪公演の楽日が幕を下ろした。全シーンをすべて目に焼きつけた者として、書かずにはいられない、のでバラシを待つ間、ちょっと振り返る。
おおとり、Sun!!のカーテンコール後、キャスト・スタッフ全員のエンドロールが流れ始めると、大喝采が。そのままエンドロールが終わっても鳴り止まぬ拍手の中、客席で競演者を見守っていた俳優が立ち上がって、全員がエールを送り合う形に。10人の俳優は、拍手に背中を押されるように舞台上へ。相内プロデューサーも、檀上にあがって「これから全国へ旅立ちます!」と宣言し、会場は熱気に包まれた。
フジロックが夏の代表的な野外フェスだとするなら、ガチかぶりのこちらは日本一熱い、“一人芝居フェス”。10作品をまる一日かけて見るという、客側の根性も問われるロックなイベントといえる。
途中で二度、1時間のインターバルがあるとはいえ、約8時間という長丁場を劇場の中で過ごすなんて、演劇無関係者からしてみれば、異例のこと。しかし、手には受付でいただくドリンク(2杯目以降も200円という驚異的安さ)、立ち見のカウンター席や、テーブル席など、思い思いのポジションから好きな作品を鑑賞できる“ご機嫌スタイル”が、この大阪公演の素晴らしさといえよう。
見続けた4日間には、大きなうねりがいくつもあった。芝居は生もの。作り込んだ作品に加え、お客さんが放つエネルギーをすぐさま笑いに変換したり、アドリブにつなげるといった、ライブ感覚を盛り付けていく俳優陣の術には脱帽!としか言いようがない。
どの日もそれぞれによかったが、個人的に、一番印象的だったのは7月30日(土)だ。
トップバッターの福山俊朗が5分もたたないうちに客の心をわしづかみ。笑いと泣きが同居するストーリーを完璧に仕上げて、Sun!!にバトンタッチ。完成度の高いファンタジーの世界に心うばわれ、泣きにさらに拍車がかかったところで、玉置玲央の悪魔的な魅力に理性がぶっ飛び、「とんでもないもの見た気がする…」とボー然となる。あっという間に1ブロックが終了。
休憩をはさみ、心が落ち着いたところで、また加藤智之の際どさにあっけに取られるも、いたって純粋なラブストーリーであった事実に女子的感情が乱された後に、ヤマサキエリカの笑顔に縁取られた悲劇。「これって…」と、考え出すと背筋が凍るような感覚に。
その後、満を持して大塚宣幸が登場。玉置の「いまさらキスシーン」をアレンジしたアドリブで、登場3秒で客席を笑いの渦に巻き込み、その後も10秒に1度は笑いをさらう。次はさらに一転、横田江美の結末まで気を抜けないサスペンス。感情をあらわにしない盲目の占い師の不思議な姿が脳裏に焼きつく。
ええもんみたなあ、と思ったら、外はすっかり夕暮れ。劇場外の商店街(王将)で小腹を満たし、さてさてラストのブロック。
3ブロック目のトップは、谷屋俊輔。はやぶさそのものをパワフルに擬人化し、計算しつくした肉体の動きと音、光でスケールの大きな宇宙の世界へいざなう。
北海道からの刺客・榮田佳子が舞台上で食べ続ける。あまりの食べっぷりに、客席の男性から称賛のため息がもれる。トリは、山田百次。こちらに津軽弁を理解するスキルはなくとも、豊かな表情に魅せられ、耳は音楽を取り込むように物語を理解しはじめる。ラストは、誰もが笑顔になったはずだ。
怒涛の8時間をともに駆け抜けた客席には、一種の連帯感すら生まれていたような気がする。
この日は10作品から、ひとつの大きなうねりが立ち上がった。このセレクションそのものが、劇場としての「ひとつの作品」と相内プロデューサーの言った意味がよくわかった。今年、この「INDEPENDENT」のうねりに出会えた人は幸せだ。本当にそう思う。
役者の中には1年後のスケジュールまで埋まっている人もいる。この顔ぶれで同じ作品をなぞることは、おそらくもう二度とないだろう。
土日のチケットは1週間前に完売した。INDEPENDENT始まって以来のスピードだと聞いたが、その嗅覚は正しい。
幕が下りた後、暗転の中に漂う濃密な興奮。一瞬後の割れるような拍手が忘れられない。
仁張美穂
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